米中貿易戦争の本質

前々回の宋メールは交換留学で米国大学から上海に留学している長女が書いてくれました。その長女が知らなかった母国のいろいろな側面に驚いていますが、その中の一つが電化製品の安さです。日本と中国の過去を知らない彼女にしてみれば、中国製電化製品は「性能がよくて安くて品質が普通」の代名詞です。

今はどうか分かりませんが、私が経営者現役の時、当時のスズキ自動車の経営者から「トヨタの普通自動車の原価は当社の軽自動車よりも低い」と聞きました。理由はトヨタの桁違い販売数です。売値の違いと数を合わせて考えればトヨタ自動車の利益力も理解できます。

中国製品は安かろう悪かろうの時代はありました。今もそのようなメーカーは一部残っているでしょう。しかし、都会に住み、中産階級になった5億人がそのような製品に興味がないことを、中国で生活していれば誰でも分かります。

米国や日本などに輸出している製品は中産階級が選ぶ製品の一部に過ぎません。安いのは中国では膨大な数の量が売れているからであって、単なる人件費が安いからではないのです。ここ10年の人件費は何倍にもなりましたが、製品の値段は上がるどころか、むしろ下がり続けているのです。コスト=人件費の発想は販売数に限界があるときの発想です。

人件費で言えば、インドは中国よりはるかに低いのですが、インドのスマートフォンの約半分は中国メーカーが占めています。特にまだ創業8年の「小米」が既にサムソンのシェアを超えてインドのトップシェアになったのです。インド人には経営力も技術力もあります。人件費も安いと考えればいずれ地元メーカーがトップシェアを取り戻すと思うのですが、今のところ、中国市場での販売数に支えられている中国メーカーに負けているのです。

購買力がない時代の中国は人件費が安くても市場がないため、製品は輸出に依存するしかありませんでした。日本を含む海外メーカーも自国や輸出のために中国で作っていたのです。中国進出の目的は中国に売ることではなく、中国の安い人件費と安いインフラを利用することでした。しかし、中国に5億人の中産階級が誕生した今、状況はまるで逆になりました。

米国から見れば中国の輸出は減っていないのですが、中国にとってみれば米国への輸出が占める販売シェアはどんどん下がっているのです。仮に全部を止めても国内の1%に過ぎないのです。外資企業も中国市場で一定のシェアが取れない限り、中国で生産するメリットは殆どなくなります。

仮に安い人件費を求めて東南アジアに移転しても、中国メーカーも必要に応じて同じことをやっているので現地の華人社会や陸路搬送のメリットを考えると人件費の安さを求める渡り鳥モデルには限界があります。

ここに米中貿易戦争の本質もあります。「モノの製造コストは販売数に反比例する」という原理を考えれば米中の製造業の競争は最初から勝負がついています。中国が国内消費のあまりを米国に輸出している以上、米国はこのコストに勝てません。昨年時点では、金額ベースでも中国の小売り販売規模は既に米国を超えていました。今後、その差が開くばかりでしょう。

残念ながら、米国が主張してきた自由競争、自由貿易を続ける以上、米国の貿易赤字が拡大していく一方です。トランプ氏が「不公平」と連呼したのは結果であり、プロセスではないのです。「結果がすべて」と考えるトランプ氏はやり手経営者として正しいのです。

私は両国ともがこの問題を取り込むべきだと思うのですが、米国は正式に「自由競争、自由貿易」の放棄を宣言しない限り、無意味な喧嘩が続くのでしょう。貿易相手国の内部体制まで自分のやり方を押し付けるのは大国同士には通用しないはずです。

今週、中国は分厚い貿易白書を発表しました。統計数字がたくさん羅列しています。要は米中間のサービス貿易や中間部品などを統計に入れると中国は決して黒字を稼いでいないというのです。まあ、中国人の私から見ても「米国人がこんな難しい統計を見る訳もない上、そもそも双方が見ているものが違う」から、無駄な努力だろうと思いました。

米中の指導者たちが何を言おうとしても、私達中国人はあくまでも少しでも自分の生活を良くしようと勤勉に働き、後世の教育にも力を入れるのです。その結果として1990年に7億5千万もいた極貧人口が2015年には1千万人に減ったのです。我々は自分たちを極貧から救ったのです。

自己救済の結果、中国は再び世界最大の経済規模になろうとしていますが、その過程がもたらす変化を中国と世界の双方がどう受け入れるか。今こそ真剣に見守る必要がありそうです。

P.S.
この原稿を書いた数時間後、トランプ氏の国連総会での演説を聞きました。
案の定、彼はグローバル化を拒絶するよう国連に促しました。グローバル化の否定はつまり世界規模の自由貿易と自由競争の否定なのです。


この記事へのコメント
宋さん、おはようございます。いつものヘソ曲りです。

今般の“市場経済”の流れに関しては、宋さんのご意見に異論はございません。

ただ、『1990年に7億5千万もいた極貧人口が2015年には1千万人に減ったのです。我々は自分たちを極貧から救ったのです』という自我自賛に関しては疑問があります。とくに宋さんが言われる“我々”とは誰でしょうか?そのまま解釈しますと、“中国”という国家ということになりますよね。つまりは習近平中国共産党政府が、中国の極貧を救ったのだと・・・。

またぞろ、宋さんは習近平中国共産党政府のスポークスマンの活動を始められたようですね。

前回も補足で書きましたが、中国では全人口の6割超(約9億人)が「農村戸籍」で4割弱(約4億人)が「都市戸籍」で、「農村戸籍」者の一人当たりGDPは「都市戸籍」者のそれの1/5しかありません。
宋さんが“中産階級”と仰るのは中国全人口の4割に満たない「都市戸籍」の人々のことで、宋さんの頭には残る6割の“貧困層”と“極貧層”は入っておられないようですね。

宋さんはトランプ氏に対して、『米国は正式に「自由競争、自由貿易」の放棄を宣言しない限り、無意味な喧嘩が続くのでしょう』と仰っておられますが、それはそのまま習近平中国共産党政府に『中国は正式に「共産党主導、覇権主義」の放棄を宣言しない限り、無意味な喧嘩が続くのでしょう』と言えるのではありませんか?

それといつもお願いしていますが、中国政府のチベット民族やウイグル族等の少数民族への弾圧と漢民族化政策についての、宋さんの忌憚のないご意見を聞かせていただきたいと思っております。
Posted by 田中 晃 at 2018年09月28日 09:09
宋様

いつも楽しく拝読しています。

米国と中国の喧嘩ですか。共和党ですからね今の米国は(笑)。民主党政権になれば、また花が咲くでしょう。

「米国は正式に「自由競争、自由貿易」の放棄を宣言しない限り、無意味な喧嘩が続くのでしょう。」と書かれてありますが、少し違和感を感じました。なぜならそもそも中国が自由競争の土台にたっているとは思えないからです。

とどのつまり米国が仕切っている国際経済の縄張りを勝手に荒らすな、ということでしょう。
米国主導の国際ルールに合わせるのか、そうしないのか。

中国が名目ともに誇れるようになるのは、もう少し先のような気がしてなりません。
Posted by i.newton at 2018年09月28日 09:23
所謂量のビジネスですね。
元々まさにその量のビジネス業界の中国企業や米企業にいた事がある私には良くわかります。
当時その企業内でも似たような話がそのままあり、結局シェアの取り合いとヴォリュームディスカウントによるコストダウンが大本で
それをベースにしたグローバルオペレーションと、各国での販売戦略と実行によって数字が動くというパターンです。
中国は超巨大市場で中国企業の場合は中国で稼いで世界に投資しシェアを取る。
米企業の場合はAPJ全部足したよりも中国の方が大きいので利益率高めの成熟市場の利益を投資して中国でのシェア合戦を戦う感じでした。

さて製造業などにおける量のビジネス構造はまさにそれなのですが知的財産系は別の事情があります。

中国では他国と比較にならないレベルで所謂割れユーザが当たり前で、それなりの規模の法人でも違法コピーというやつを使いまくってます。
IPの侵害という部分に関しても中国は半端なくここはさすがに是正してねと言いたい部分です。

国が自国の利益優先や自国産業を優遇するのは至極当然の事です。
しかし商売や一般的取引においては国を超えてルールや合意というものがあるのではと思います。
これは量のビジネス構造とは全く違う話なので論点が異なる為ロジックのすり替え的要素はありますが、今トランプ氏の言う不公平の中にはこのIPの問題も一応含まれており、ここは私も是正ポイントではと思ってます。
その一方で市場の違いや構造を無視してとやかく言うのは筋違いだと思いますのでトランプ氏の言い分で合意できるのは正直一部ですが。

またグローバリズムの否定・・はまだなんとなく理解できますが、自由競争の否定は経済活動そのものを否定してるように聞こえるので賛同できないですね。
私個人としては市場に一定の自由を与えて真の自由競争あってこそ市場は活性化し技術なども進歩していくと思っているので。
(まあなので日本の現状の堅い規制や官製相場的な要素は大嫌いなのですが)

その過程で、各国の思惑や市場・国内状況の違いで今回のような衝突が起きたりするのは割と普通の事だと思うので、市場が変化するのに必要な過程と受け取っており、特別なことだとは思ってないです。
市場や経済はそういった偏りや情勢によって最終的に均衡するでしょうから、結局重要なのはどこの市場はどれぐらいの規模に成長し世界経済のバランスがどう変化するかであり、そういう意味で中国市場が今後その情勢をリードする存在になるのは間違いないです。
だからこそIPの部分はさすがになんとかしてねと思ってしまうわけです。
世界をリードする市場がそれでは格好悪いのではなんて思ってしまったりもするので・・。
Posted by 通りすがり at 2018年09月28日 09:24
中国の卑劣さを世界中が批判しているのです

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)9月28日(金曜日)弐
        通巻第5839号   

 中国は「世界の工場」から「世界の市場」、そして「世界のゴミ箱」
  トランプ・安部の「日米共同声明」を読んだか?すごい内容が盛り込まれているゾ
****************************************

 相変わらず日本のメディアの唐変木。
 2018年9月27日、国連総会に出席した安部首相とトランプ大統領の「日米主要会談」が引き続きNYで行われ、「共同声明」が発表された。安部首相は23日のNY到着直後にトランプの私邸に招かれて二時間余の夕食をともにしており、入念な打ち合わせが行われていた。

 したがって日米共同声明には、重大な内容が盛り込まれているが、日本のメディアは、最重要事項をスルーして、貿易面での合意事項を重箱の隅を突くように弄(ほじ)くって、日本のビジネスにどういう影響があるのか、産業界にいかなる影響がでるのかなどと矮小な問題的だけを分析している。
 
 商人の目線、本質を探るより、水面上の泡(あぶく)だけを見て、「ああだ、こうだ」と騒ぎ立てている。
経団連、与党、霞ヶ関にも共通していることだが、それを集約するメディアの報道に戦略的思考はどこにもない。
野党も解析能力が稀薄なうえ、国際情勢の認識力がゼロに近いため、TAG(日米物品貿易協定)はTPP精神に反するとか、アメリカに譲歩しすぎだから安部首相を追求するとか。

 TPPから離脱した米国と、日本の貿易交渉は、これから二国間交渉となることは明白であり、日米間でFTA(自由貿易協定)を結ぶことになるだろう。その前に車の関税はしばし棚上げし、当面はTAG協議をおこなう。つまり、日本が譲歩したのではなく、アメリカ側の譲歩ではないのか?

 第一に「日米共同声明」は、米国が従来の親中路線をかなぐり捨て、敵視政策への転換を明確に示し、規制と制裁をかけるが、日本はそれに同調すると同意しているのである。
 噛み砕いて言えば、中国は「世界の工場」から「世界の市場」となって、世界的な企業がチャイナチャイナと喧噪を示したが、その勢いは止んで、流れは明白に変わり、中国はやがて「世界のゴミ莫迦」となるが、それを助長すると行間が示唆している。

 第二に知的財産権が盗まれ、ハイテク企業が中国資本に買収され、本来、自国が得るべき所得が中国に環流したことをトランプは猛烈に批判し、「グローバリズム拒絶」「愛国主義」に立脚する政策に立ち帰ると言った。

このトランプの国連演説は、中国を批判して止まないクドロー、ボルトン、ナバロの考え方が基調にある。ところが、当初はクドロー、ボルトン、ナバロを非難してやまなかった米国のメディアも議会人も、それを忘れて中国批判に同調している。中国批判は、いまや米国のコンセンサスである。

 グローバリズム拒否というのは「イデオロギー」を拒否するという意味で、国境の壁を撤廃し、規制をなくし、つまりは国家を解体すると面妖なグローバリズムという思想では、自由主義本来の市場まで破壊されかねない。
公平なルールを遵守し、双務主義に基づく交易という原則に立ち戻ろう、それが「愛国主義」だと主張しているのである。


 ▲日米共同声明の第六項に注目せよ

 またトランプ大統領の国連安保理事会、その後の記者会見などで、ウイグル族弾圧の強権政治を批判している。ハッカー攻撃による情報の盗取についても触れた。人権、民主をよびかける程度だったオバマ政権までの米国の親中姿勢は掻き消え、声明文には、「友好」などという文字がどこにも見られない。
 すなわち最重要事項は下記の「日米共同声明」の第六項である。

 「六 日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって作り出させる歪曲化および過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく」

 ここでいう「第三国」が中国を指し、その中国による「知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって作り出せる歪曲化および過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処する」と言っているのである。

 もっと具体的に言えば、フアウェイ、ZTEを米国や豪が排除したように、つぎにテロリストへの資金洗浄として規制が強化された海外送金やドル取引に対して、米国は、たとえばフランスのパリバ銀行を処分し、巨額の罰金を課したうえで、「一年間のドル取引」を禁じた。つまりフランスの名門銀行も国際ビジネスができなくなった。
 これが中国の銀行にも適用される。

 米国内においても、軍事技術盗取の中国人スパイをつぎつぎと摘発し、中国軍に直結する取引をしていた個人や企業の口座を凍結している。ロシア財閥の在米資産凍結ばかりではない。欧米、とりわけ英仏独、スイスの銀行も処罰されており、西側の銀行は、中国との取引に慎重となっている。


 ▲だから中国の経済はマイナスに転落する

 同日、FRBは利上げを発表した。0・25%上げて、2・00−2・25%となる。
 するとどうなるのか。世界市場にだぶついてきた資金の米国への環流が始まる。猛烈な勢いでウォール街へドル資金が流れ込んでいる。

 連鎖で、新興国通貨は暴落する。アルゼンチン、南ア、ブラジル、トルコなどの通貨がどかんと下落したが、もっとも悪影響のでる中国人民元は下落が目立たない。
 なぜなら中国当局が人民元の買い支えをしているからだ。
これまでとはまったく逆で、中国は為替に介入し、人民元を下落誘導してきたが、いまは下落防止の買い支え、このためにドルを使うから、ますます外貨準備は減少し、そのうえで対米貿易黒字が激減しているから、人民元を買い支えるドルが払底する。
その次?
人民元の大暴落がおこるだろう。

 すでに上海株は年初来15・6%の下落を示しており、人民元は4月から九月にかけて、9%の下落を演じてきた。いかに中国が買い支えても、株価下落は歯止めがかからず、また人民元は防御ラインのレートをまもなく割り込んでいくだろう。

 米中貿易戦争は終わりの始まりでしかなく、次は金融と通貨戦争に移行する。
もはや「紛争」レベルのはなしではない、熱戦や殺戮兵器を伴わないが、これは「戦争」である。


▲こんな危機状況に「日中友好」?

 このような時に「日中友好40年」とか、日本企業の対中直接投資経済、日中通貨スワップ、トヨタ、日産などがEV車対応のための工場拡大とか、パナソニックのリチュウム電池日中協同開発とか、いずれトランプ政権の制裁の対象になるだろう。
 
 中国は、この最悪事態への陥落をさけるために代理人キッシンジャーなどを使い、米国マスコミへの宣伝を強化しているが、アメリカの政治風土でいうと、トランプ大統領より、議会は対中強硬派が主流となり、米国メディアは朝から晩までトランプ攻撃に忙しいが、こと中国に関しては、トランプより強硬である。

 つまり米国は挙国一致で、中国を敵視する姿勢に転換している。この深刻な事態をまったく理解していない日本の財界、企業トップ、そしてメディアは、指摘するまでもなく目が節穴、自滅への驀進を続けるつもりらしい。
Posted by 沖 弘隆 at 2018年09月28日 11:35
無法国家、強盗国家、嘘つき国家、中共に世界が制裁に乗り出したのです

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)9月28日(金曜日)弐
        通巻第5839号   
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 中国は「世界の工場」から「世界の市場」、そして「世界のゴミ箱」
  トランプ・安部の「日米共同声明」を読んだか?すごい内容が盛り込まれているゾ
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 相変わらず日本のメディアの唐変木。
 2018年9月27日、国連総会に出席した安部首相とトランプ大統領の「日米主要会談」が引き続きNYで行われ、「共同声明」が発表された。安部首相は23日のNY到着直後にトランプの私邸に招かれて二時間余の夕食をともにしており、入念な打ち合わせが行われていた。

 したがって日米共同声明には、重大な内容が盛り込まれているが、日本のメディアは、最重要事項をスルーして、貿易面での合意事項を重箱の隅を突くように弄(ほじ)くって、日本のビジネスにどういう影響があるのか、産業界にいかなる影響がでるのかなどと矮小な問題的だけを分析している。
 
 商人の目線、本質を探るより、水面上の泡(あぶく)だけを見て、「ああだ、こうだ」と騒ぎ立てている。
経団連、与党、霞ヶ関にも共通していることだが、それを集約するメディアの報道に戦略的思考はどこにもない。
野党も解析能力が稀薄なうえ、国際情勢の認識力がゼロに近いため、TAG(日米物品貿易協定)はTPP精神に反するとか、アメリカに譲歩しすぎだから安部首相を追求するとか。

 TPPから離脱した米国と、日本の貿易交渉は、これから二国間交渉となることは明白であり、日米間でFTA(自由貿易協定)を結ぶことになるだろう。その前に車の関税はしばし棚上げし、当面はTAG協議をおこなう。つまり、日本が譲歩したのではなく、アメリカ側の譲歩ではないのか?

 第一に「日米共同声明」は、米国が従来の親中路線をかなぐり捨て、敵視政策への転換を明確に示し、規制と制裁をかけるが、日本はそれに同調すると同意しているのである。
 噛み砕いて言えば、中国は「世界の工場」から「世界の市場」となって、世界的な企業がチャイナチャイナと喧噪を示したが、その勢いは止んで、流れは明白に変わり、中国はやがて「世界のゴミ莫迦」となるが、それを助長すると行間が示唆している。

 第二に知的財産権が盗まれ、ハイテク企業が中国資本に買収され、本来、自国が得るべき所得が中国に環流したことをトランプは猛烈に批判し、「グローバリズム拒絶」「愛国主義」に立脚する政策に立ち帰ると言った。

このトランプの国連演説は、中国を批判して止まないクドロー、ボルトン、ナバロの考え方が基調にある。ところが、当初はクドロー、ボルトン、ナバロを非難してやまなかった米国のメディアも議会人も、それを忘れて中国批判に同調している。中国批判は、いまや米国のコンセンサスである。

 グローバリズム拒否というのは「イデオロギー」を拒否するという意味で、国境の壁を撤廃し、規制をなくし、つまりは国家を解体すると面妖なグローバリズムという思想では、自由主義本来の市場まで破壊されかねない。
公平なルールを遵守し、双務主義に基づく交易という原則に立ち戻ろう、それが「愛国主義」だと主張しているのである。


 ▲日米共同声明の第六項に注目せよ

 またトランプ大統領の国連安保理事会、その後の記者会見などで、ウイグル族弾圧の強権政治を批判している。ハッカー攻撃による情報の盗取についても触れた。人権、民主をよびかける程度だったオバマ政権までの米国の親中姿勢は掻き消え、声明文には、「友好」などという文字がどこにも見られない。
 すなわち最重要事項は下記の「日米共同声明」の第六項である。

 「六 日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって作り出させる歪曲化および過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく」

 ここでいう「第三国」が中国を指し、その中国による「知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって作り出せる歪曲化および過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処する」と言っているのである。

 もっと具体的に言えば、フアウェイ、ZTEを米国や豪が排除したように、つぎにテロリストへの資金洗浄として規制が強化された海外送金やドル取引に対して、米国は、たとえばフランスのパリバ銀行を処分し、巨額の罰金を課したうえで、「一年間のドル取引」を禁じた。つまりフランスの名門銀行も国際ビジネスができなくなった。
 これが中国の銀行にも適用される。

 米国内においても、軍事技術盗取の中国人スパイをつぎつぎと摘発し、中国軍に直結する取引をしていた個人や企業の口座を凍結している。ロシア財閥の在米資産凍結ばかりではない。欧米、とりわけ英仏独、スイスの銀行も処罰されており、西側の銀行は、中国との取引に慎重となっている。


 ▲だから中国の経済はマイナスに転落する

 同日、FRBは利上げを発表した。0・25%上げて、2・00−2・25%となる。
 するとどうなるのか。世界市場にだぶついてきた資金の米国への環流が始まる。猛烈な勢いでウォール街へドル資金が流れ込んでいる。

 連鎖で、新興国通貨は暴落する。アルゼンチン、南ア、ブラジル、トルコなどの通貨がどかんと下落したが、もっとも悪影響のでる中国人民元は下落が目立たない。
 なぜなら中国当局が人民元の買い支えをしているからだ。
これまでとはまったく逆で、中国は為替に介入し、人民元を下落誘導してきたが、いまは下落防止の買い支え、このためにドルを使うから、ますます外貨準備は減少し、そのうえで対米貿易黒字が激減しているから、人民元を買い支えるドルが払底する。
その次?
人民元の大暴落がおこるだろう。

 すでに上海株は年初来15・6%の下落を示しており、人民元は4月から九月にかけて、9%の下落を演じてきた。いかに中国が買い支えても、株価下落は歯止めがかからず、また人民元は防御ラインのレートをまもなく割り込んでいくだろう。

 米中貿易戦争は終わりの始まりでしかなく、次は金融と通貨戦争に移行する。
もはや「紛争」レベルのはなしではない、熱戦や殺戮兵器を伴わないが、これは「戦争」である。


▲こんな危機状況に「日中友好」?

 このような時に「日中友好40年」とか、日本企業の対中直接投資経済、日中通貨スワップ、トヨタ、日産などがEV車対応のための工場拡大とか、パナソニックのリチュウム電池日中協同開発とか、いずれトランプ政権の制裁の対象になるだろう。
 
 中国は、この最悪事態への陥落をさけるために代理人キッシンジャーなどを使い、米国マスコミへの宣伝を強化しているが、アメリカの政治風土でいうと、トランプ大統領より、議会は対中強硬派が主流となり、米国メディアは朝から晩までトランプ攻撃に忙しいが、こと中国に関しては、トランプより強硬である。

 つまり米国は挙国一致で、中国を敵視する姿勢に転換している。この深刻な事態をまったく理解していない日本の財界、企業トップ、そしてメディアは、指摘するまでもなく目が節穴、自滅への驀進を続けるつもりらしい。

Posted by 沖 兼併 at 2018年09月28日 11:41
宋さんTPPを批判する際は、貿易とは一国対一国の関係で、相互に利益になるから成り立つと論を展開してましたが、それは一面正しいし納得しますが、今回の主張にもある重要な視点、購買力のある方が優位とはひと言も触れなかったですよね。
Posted by hidepon at 2018年09月28日 13:35
宗さん いつも拝読しています。

ご指摘の内容に異論はありませんが、trumpさんの主張する知的財産権と技術開示の中国内での要求はある程度そうだろうなと推察します。

Trumpさんが文句を言うのは10年遅かったという気がします。
Posted by 小澤 一雄 at 2018年09月28日 15:35
規模の経済が通用するのはコモディティの世界、中国が付加価値の薄いものに頼るなら、それで結構。欧米、日本はそこを懸念しているのではない。

https://www.recordchina.co.jp/b604553-s0-c20-d0135.html
まさにその通り、中国人でもわかっている人にはわかっているのだ。
Posted by Nicd at 2018年09月28日 16:18
「モノの製造コストは販売数に反比例する」
という原理を考えれば米中の製造業の競争は最初から勝負がついています。
おっしゃる通りです。
その道理が通らないのがトランプで、理由の如何を問わず米国の貿易赤字を解消せよ、さもなくば高い関税をかける言っている訳で、困ったものです。
しかし、考えようによってはトランプの主張は理にかなっています。
なかなかの商売人ですね。
Posted by 山永順一 at 2018年09月28日 20:54
「モノの製造コストは販売数に反比例する」
という原理を考えれば米中の製造業の競争は最初から勝負がついています。
おっしゃる通りです。
その道理が通らないのがトランプで、理由の如何を問わず米国の貿易赤字を解消せよ、さもなくば高い関税をかける言っている訳で、困ったものです。
しかし、考えようによってはトランプの主張は理にかなっています。
なかなかの商売人ですね。
Posted by JUNICHI YAMANAGA at 2018年09月28日 21:01
〜我々は自分たちを極貧から救ったのです〜
羨ましいです! 宋さんのメールを読んでいると、今の日本に対する不満、不安がド〜ンと募って来ちゃいます。 
トランプは日本にFTAに 更にTPPも加えたような協定を飲ませちゃった…他にも、相手のミサイルの発射前に迎撃しないと間に合わないという弾の速度の遅い地上イージスを2機6000億円で買わされてるのに ろくに報道されてない! 戦後の日本のお受験教育で、簡単に騙され、簡単にコントロールされる私達が育っちゃった。組織に忠実な人達が、楽しめる、想像力も豊かな社会を創っていけるとは思わない…つい、自分の国への不満ばかりになってしまいました。 みんなが元気な社会…私達もそこに向かって行きたい!!

Posted by 美枝子 at 2018年09月30日 08:58
今回のメールでもまた宋氏及び中国人がいかに子供かを垣間見ただけでした。

先祖は大地主であったが落ちぶれてしまった貧乏人が、ようやく食べれるようになった途端、ふんぞり返っているだけの子供じみた姿を見ていると、再び歴史は来る返す気がします。

国内では8億人以上の貧民を抱えているのに、一帯一路などでアフリカへの支援や軍隊に膨大な資金を湯水のように投じている姿を見ているとそう思わざるを得ない。

かつて中国は大人の国と思っていたのだが、今は餓鬼の国になってしまってほんとに残念。


Posted by 水戸のご隠居 at 2018年09月30日 09:57
拝読させていただき(理解度や頭が良くないので…)分からない事や疑問に感じた事はありますが、質問コメントはしません。
ざっくり言えばアメリカ(トランプ)が悪く中国は悪くないという事を書いてあるのだと思いますが、どっちもどっちで国益がぶつかる戦争だと思います。
あと何となく中国(宋さん)の未来は明るい話が書いてあるように感じました。(良かったですね!という感想です)(笑)
Posted by 0084(単細胞) at 2018年09月30日 16:31
鋭い指摘です。
おっしゃる現在の状況ははその通りですね。
先進国が、技術を盗まれたと怒ってみても、つい何年か前まで人件費を搾取して利益を先食いしたきたのですからお笑いです。
所詮人間の欲がつくる劇場だと思いますね。
お笑い劇ならいいのですが・・・
Posted by みつぐ at 2018年10月01日 10:11
先に投稿してから2つの大きなニュースがあった。スウェーデンのホテルでの中国人観光客の子供じみた所業。そして日本人のノベール生理学賞受賞に見せた中国人の反応。

それがいまの中国の現状そのものであることを、改めて感じざるを得ない。それが素直な感想です。
Posted by 水戸のご隠居 at 2018年10月07日 12:04
こんにちは、はじめまして
ブログの感想ではないのですが…
宋さんのブログに出会い中国に興味を持ち
この度深センに旅行に行きました。
2〜3日の滞在でわかることなんて微々たるものだとは思いますが、深センで経験したこと出会った人に対してとてもポジティブな印象を持ちました。また、勉強になることばかりでした。
このブログのおかげで充実した旅行になりました。
ありがとうございました。
明日からまた謙虚に頑張ろうと思います。
今後のブログも楽しみにしてます!
Posted by asami at 2018年10月08日 22:36
遂に、アメリカに宣戦布告されましたね。

中共が下野するまで、アメリカは中共を締め上げると、腹を決めたようです。

この戦争の終着点を何処に定めているのかわかりませんが、

宋さんも、最悪の事態を想定した戦略をおたて下さい。
Posted by 太白 at 2018年10月11日 00:13
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