火山と氷山が共存するマンハッタン

ニューヨークには昔から若者を組織し貧困層の人々を支援してきたYSOPというボランティア組織があります。昨年、娘の学校が団体でこの組織を通じてボランティア活動に参加しました。その後の娘の経験と感想を聞いた私は、ぜひ息子にも参加してほしいと思いましたが、あいにく息子の学校はそういう活動を組織していませんでした。YSOPは未成年の個人を受け付けていないため、仕方なく私と妻と息子の三人で「Song Family」という小さな団体として参加を申し込みました。

この仕組みを簡単に説明すると、仲介者のYSOPに費用を払って一週間の奉仕労働プログラムを提供してもらうのです。プログラムはだいたい5日間の日程で構成され、朝から教会や老人ホームに行き、食品の加工と配布、厨房の手伝い、食事のサービスなどの無償労働を提供し、夕方にYSOPのオフィスに戻り総括やデスカッションを行います。

一度ホームレスと共に夕食をする機会も作っていただきました。もちろん私達がホスト役として料理を作り、ホームレスを招待し、テーブルサービスを行い、ともに会話とゲームを楽しみ、最後にお客を送り出して後片付けと掃除もやって帰路に着きます。

家族単位でしかも遠いアジアからの参加者は宋ファミリーだけだったため、私達はオハイオ州から来た農家の子供の参加者たちに組み入れられ、彼らと共に活動するようになりました。ニューヨークに滅多に来ない純朴な子供やその親達と共に働くのはとても楽しかったです。

何よりも、息子にボランティアさせるために仕方なく参加した私でしたが、思いもよらない良い体験ができ勉強になりました。

一番印象的だったのは出会った多くのホームレスは働かない人やお風呂に入らない人達ではなく、普通にユーモアがあり感受性豊かな人々です。彼らが普通と違うのは単に家を持てないだけです。夕食に来てくれた同じ年(55歳)の男性と身上話を交換してみました。彼はハリケーンで5年前に家と家具を無くした上、2年前に奥さんも癌で亡くしました。彼自身も病気で稼ぎのよい仕事ができないため、家を持つことを諦めました。

政府や教会が提供している寝るだけの場所はホームレスシェルターというのですが、大きなホールにベッドだけが並ぶ文字通りの寝るだけの場所です。プライベートな空間はゼロです。長くこのような生活を続けると健康な人間でも健康を失います。それに彼らは米国の現在の医療システムの中ではとても病気を治す余力はないと思います。

一番ビックリしたのは好景気と言われる中、ここ数年ニューヨークのホームレスは増え続け、1930年代の大恐慌以来の数に膨らみました。正確な統計は取れていないのですが、最低6万人以上のホームレスがニューヨークにいます。その中になんと2万人以上の未成年ホームレスがいます。家族単位でホームレス生活している人数は1万5千人もいます。

統計には氷山モデルが多いのです。ホームレスが史上最多であれば、家があるものの、生活に苦しんでいる人達も史上最多になっているはずです。案の定、国連の調査によると米国の貧困者は4000万人に達しているのです。その中には一日の生活費が1.5ドル未満の極貧層1850万人が含まれています。

しかし、私達がボランティアしている現場のすぐ近くにはニューヨーク証券取引所があります。あの中の掲示板は史上最高の数字を弾き出しています。失業率が低く、労働価格が上昇し、企業収益も好調だというのです。この狭いマンハッタンにまさに火山と氷山が同時に存在し、どちらが米国経済の本流なのか、私には分かりません。しかし、ますます増大した矛盾の背後に何らかの危機が潜んでいるに違いないと思いました。

昨夜はタイムズスクエアを散策しました。あの手この手で観光客を騙す手口は相変わらずですが、路上に並んでいる偽物カバン屋の多さにびっくりしました。警察が物々しい顔をしながら偽物カバン屋の横を素通りする風景もまさに火山と氷山が共存する風景でした。
この記事へのコメント
これぞ格差社会という感じですね
実体験に基づく情報はとてもリアルに伝わりました
私も以前NYに行った事がありますが当時ホームステイした移民系黒人家の奥さんはピンとキリが混在するからNYと言っていたのを思い出します
Posted by 通りすがり at 2018年06月22日 08:21
失業率3%のアメリカの現実は、底辺では中々厳しいですね。
第二の大国である中国も頂点と底辺の差は同じ様なものでしょうが、成長の途上で格差が大きいと、低成長になってからの格差は更に厳しいものになるでしょう。ブラジルのように途中(中進国)で低成長になれば未だ格差はましかもしれませんが、そのような政策は取れないでしょう。習政権が長く続くでしょうから、その将来は暗澹たるものがありますね。
Posted by 旧旧車 at 2018年06月22日 08:22
息子さんも、素晴らしい経験をなさいましたね♪
最近、社会主義を考えます。北朝鮮もそうですね。ここ日本でも以前は、社会主義国と言ってもいいくらいの中間層の多い社会でした。多分その頃の日本は経済力も豊かで、世界第2位とかトップ?とか、行ってたんじゃ…?  
もしかして今の日本の底辺層で苦しんでる人には、北朝鮮の方がずっと住みやすいかも。
最近、どうして能力もあって強かったネアンデルタール人の方が残らなかったんだ?とか、テレビでやってたけど、集団での助け合いがあまりなかったんでしょうね?  
協力、助け合いは、この先の人類の生き残り策?としても、見直したいように思います。
Posted by 美枝子 at 2018年06月22日 08:36
宋さん、おはようございます。いつものヘソ曲りです。

今日の宋さんの、アメリカに関するメルマガのご意見に異論はございません。

ただ、アメリカのこの”貧困層/富裕層”の格差の現状は公開されていますので、世界中が公的に知るところですし、世界で議論されているところです。

一方で、中国の現状はアメリカと似たりよったりだと思われていますが、”人権問題”と同様に貧富の差の存在を習近平共産党政府が隠蔽していますので、外部の報道でさえ正確にその数字を知ることができません。

アメリカは”氷山の一角”が表面に現れていますから、宋さんのように問題啓発の意見が言えますが、中国では表面に出た”氷山の一角”を力ずくで平にしてしまい、『氷山は存在しない』と公言する国家ですから、国内で『氷山の存在』を言えばたちまち検挙されますよね。

宋さんも中国国内向けに『氷山の一角』を発信されれば、私も宋さんに盲従する”宋ファン”になれるのですがね。
Posted by 田中 晃 at 2018年06月22日 08:47
労働者市場はAIとの競争や移民との競争激化で賃金が上昇する余地は残されていません にもかかわらず物価や税金を上昇させる政策を推進させているのですから当然の結果ですかね
現在の資本主義が望んだシナリオの結果が火山と氷山の共存ならサドとマゾですな
Posted by 主水 at 2018年06月22日 09:15
米国や中国などの現場から発信される生きた情報は日本人にとって貴重なものだと思います。なぜなら、宗さんの発信情報は、偏らない冷静な分析に基づいている(と私は思います)からです。国会の追求逃れとしか思えない外遊(中身が薄いので遊としました)を繰り広げるトップから発信される情報よりは少なくともずっと事実がわかる有意義な情報に思われます。
Posted by kimura at 2018年06月22日 10:59
普通の人が普通に暮らせることが、そんなに難しい社会になってしまったのでしょうか・・・

哀しい現実ですね。

お金を出してボランティアを5日間させて貰う仕組みは、素敵ですね。
日本でも作れるといいなと思いました。
Posted by hohoemi at 2018年06月22日 11:23
「一を聞いて十を知る」というところまでには至りませんが、宋さんからの一つのレポートによって三つくらいの未来を垣間見たようで、戦慄が襲ってきました。形を変えながら同じような歴史が繰り返しているようですが、私たち当事者は体験によって悟るのでしょう。これは、得た知識では想像(理解)できても、体験を伴わない知識は都合の良いように解釈されるからだと思います。
Posted by 桧垣昌義 at 2018年06月22日 14:13
資本主義の権化の国:儲け第一=効率優先、コケたヤツや無能なヤツはくたばればいい、と言うのがほんねかな。好景気の中、ホームレスが増え続けるのにビックリしたというのは宗さんらしくないね。でも、安心した。
     by hesomagari
Posted by 吉永哲司 at 2018年06月22日 15:31
私は僧侶ですが、ここ2年ほど、先生についてロスアンジェルスに滞在し、何箇所かで法話されるのをお聞きしています。

ロスアンゼルスのリトル・トウキョウの一角にある東本願寺の
別院の前の通りに、テントがずらりと並び、ホームレスの人たちが暮らしているのを見て、何とも複雑な気分になったのを思い出しました。

その時、子供が学校の宿題が分からない時には、ホームレスの人に尋ねに行く話を聞いて、ますます分からなくなりました。
Posted by 向井孝夫 at 2018年06月22日 16:01
実体験に基づく、ホットな感情が行間からあふれ出ていました。知識として知ってはいましたが、肌感覚で分かるかどうかは、大きな違いと思います。

また、10年ほど前になりますが、ブラジルに出張したときには、格差はあっても社会は維持できるのだ、と感じました。
それまで、格差はないことが好ましいが事実上あるのはしかたないもの、なのだと思っていましたが、かの地では階級はただ『ある』もので、それがおかしいとも解消すべきものでもなく、あまり疑問にも思っていないようでした。
驚きましたし、統計として平均を使うのは気を付けないといけないと強く感じました。
Posted by 盲従 at 2018年06月22日 16:47
成功者ファミリーが高い旅費をかけて敗者側に慈善活動という構図にも見て取れますが、
流石に感情を控えられ事実を提示されて、確かになあと感じ入ります。
だから、、資本主義の限界? 

日本はどうなんでしょうね、米国で流行ることは大体10年もすると日本に来たりしますがこういうことは勘弁して欲しい、
だから私のできることは、、
Posted by 趣味が釣りと砥石 at 2018年06月22日 16:57
良いご経験をされて感服しております。
様々な世界があって、実際に見る、聞くと世界は広いな〜と思います。スパルタの時代に子供を共同の場で育てる習慣がありましたが、今の時代の様々な事件を見ているとそのようなこともまだまだ必要になる可能性もありますね。
Posted by suzuki sin at 2018年06月22日 17:24
宋さん おはようございます。いつもお話しを読ませていただき感謝申し上げます。実体験の話を聞くと心が痛みます。少しでも健やかに暮らせる社会を目指していますが、なかなかです。小生は震災後、福島県南相馬市の医療、福祉の支援をライフワークとして続けています。いろいろな背景の人々が同じ町で暮らしている実情はそちらと同じですね。何とかしなければと空回っています。お力をお貸しください。
Posted by 清水 昭 at 2018年06月23日 08:55
ピケティの資本論如く、金融で資産を築く人が汗を流してお金を稼ぐ素晴らしさに気がついてくれれば良いのですが?このままでは会社に勤めても給料は上がらず、希望が持てない若者が増えるだけで、楽をしてお金を稼ぐ人間が増えて、労働で生きる人は生活するのが精一杯で夢も見られず死んでいくのかと思うと人生が辛くなります。若者に希望の持てる日本にしたいですね。
Posted by 関野卓郎 at 2018年06月23日 09:09
ニューヨークのみならず、東京でも、パリ・ロンドンでもハワイでもホームレスは多数見うけます。だからと言ってニューヨークのホームレスが格差社会の象徴例だとは思わない。ノーベル経済賞を受賞し金融デリバリーで億万長者になった者でも、一つ判断を間違えば、一文無しになり、大豪邸も失う。そしてそんなホームレスの方々の大半は、そんな境遇になった原因は、社会の責任でも他者の責任でもない、自分の責任だと知っていると思う。だからテロも犯罪も侵さずに淡々と日々を生きていける。

数年前にNHKで貧困老人の番組を放映していたが、そんな境遇に陥っている老人の多くは、若き働き盛りのころに老後のことも感がなかったし、不慮の災害や病気になることも考えずに生活していたことを後悔している。老後の資金を備蓄できる期間は十分にあったし、不慮の災害や事故・病気に対して、保険を掛けることもできた。それをしてこなかった責任は、すべて自分にあると考え、境遇に甘んじているのではないか。自由と自己責任の国のアメリカで、そんな常識を持ち、他者とウィットに富んだコミュニケーションができるホームレスが多いのは、ある意味当然かもしれない。

ピケティなどが、米国全体の所得の20%は1%の超富裕者によって占められるなどと言っているが、超富裕者だからとって一般庶民の20倍旨いものを喰っているのか? 一般庶民に比較して20倍も広い部屋で生活して何か意味はあるのか?単に普通のスーパーで100円で売っている食品にわざわざ2000円払って満足しているだけではないのか? 所得に20倍の差があろうが、20倍満足のいく生活ができているのか? 社会的平等を謳った共産主義社会でさえ、能力に応じた所得配分を掲げているのに、能力と責任において差異がでることに格段疑問はない。

自分にとって一番重要なことは、所得に格差があることではない。ホームレスに甘んじる生活をしている者であっても、「再び復活できるシステムが備わっているかどうか」、そして「自分の責任で不測の時代に常の備えておくリスク管理の考え方が徹底しているか」にあると思う。
アメリカは、その点において日本よりは進んだ見習うべき面があることは確かだ。

宋氏がせっかくボストンに住まわれているのなら、ちょっと足を延ばして、コロラド州のデンバーあたりを観光することをお勧めする。
ニューヨーク、ボストンやカリフォルニアでは感じられない本当のアメリカの豊かさを感じられると思う。中国のポっと出てきた億万長者とは格段に違うはずだ。
Posted by 大木みきお at 2018年06月23日 14:28
ニューヨークのみならず、東京でも、パリ・ロンドンでもハワイでもホームレスは多数見うけます。だからと言ってニューヨークのホームレスが格差社会の象徴例だとは思わない。ノーベル経済賞を受賞し金融デリバリーで億万長者になった者でも、一つ判断を間違えば、一文無しになり、大豪邸も失う。そしてそんなホームレスの方々の大半は、そんな境遇になった原因は、社会の責任でも他者の責任でもない、自分の責任だと知っていると思う。だからテロも犯罪も犯さずに淡々と日々を生きていける。

数年前にNHKで貧困老人の番組を放映していたが、そんな境遇に陥っている老人の多くは、若き働き盛りのころに老後のことも感がなかったし、不慮の災害や病気になることも考えずに生活していたことを後悔している。老後の資金を備蓄できる期間は十分にあったし、不慮の災害や事故・病気に対して、保険を掛けることもできた。それをしてこなかった責任は、すべて自分にあると考え、境遇に甘んじているのではないか。自由と自己責任の国のアメリカで、そんな常識を持ち、他者とウィットに富んだコミュニケーションができるホームレスが多いのは、ある意味当然かもしれない。

ピケティなどが、米国全体の所得の20%は1%の超富裕者によって占められるなどと言っているが、超富裕者だからとって一般庶民の20倍旨いものを喰っているのか? 一般庶民に比較して20倍も広い部屋で生活して何か意味はあるのか?単に普通のスーパーで100円で売っている食品にわざわざ2000円払って満足しているだけではないのか? 所得に20倍の差があろうが、20倍満足のいく生活ができているのか? 社会的平等を謳った共産主義社会でさえ、能力に応じた所得配分を掲げているのに、能力と責任において差異がでることに格段疑問はない。

自分にとって一番重要なことは、所得に格差があることではない。ホームレスに甘んじる生活をしている者であっても、「再び復活できるシステムが備わっているかどうか」、そして「自分の責任で不測の時代に常の備えておくリスク管理の考え方が徹底しているか」にあると思う。
アメリカは、その点において日本よりは進んだ見習うべき面があることは確かだ。

宋氏がせっかくボストンに住まわれているのなら、ちょっと足を延ばして、コロラド州のデンバーあたりを観光することをお勧めする。
ニューヨーク、ボストンやカリフォルニアでは感じられない本当のアメリカの豊かさを感じられると思う。中国のポっと出てきた億万長者とは格段に違うはずだ。
Posted by 大木みきお at 2018年06月23日 14:38
ニューヨークのみならず、東京でも、パリ・ロンドンでもハワイでもホームレスは多数見うけます。だからと言ってニューヨークのホームレスが格差社会の象徴例だとは思わない。ノーベル経済賞を受賞し金融デリバリーで億万長者になった者でも、一つ判断を間違えば、一文無しになり、大豪邸も失う。そしてそんなホームレスの方々の大半は、そんな境遇になった原因は、社会の責任でも他者の責任でもない、自分の責任だと知っていると思う。だからテロも犯罪も起こさずに淡々と日々を生きていける。

数年前にNHKで貧困老人の番組を放映していたが、そんな境遇に陥っている老人の多くは、若き働き盛りのころに老後のことも感がなかったし、不慮の災害や病気になることも考えずに生活していたことを後悔している。老後の資金を備蓄できる期間は十分にあったし、不慮の災害や事故・病気に対して、保険を掛けることもできた。それをしてこなかった責任は、すべて自分にあると考え、境遇に甘んじているのではないか。自由と自己責任の国のアメリカで、そんな常識を持ち、他者とウィットに富んだコミュニケーションができるホームレスが多いのは、ある意味当然かもしれない。

ピケティなどが、米国全体の所得の20%は1%の超富裕者によって占められるなどと言っているが、超富裕者だからとって一般庶民の20倍旨いものを喰っているのか? 一般庶民に比較して20倍も広い部屋で生活して何か意味はあるのか?単に普通のスーパーで100円で売っている食品にわざわざ2000円払って満足しているだけではないのか? 所得に20倍の差があろうが、20倍満足のいく生活ができているのか? 社会的平等を謳った共産主義社会でさえ、能力に応じた所得配分を掲げているのに、能力と責任において差異がでることに格段疑問はない。

自分にとって一番重要なことは、所得に格差があることではない。ホームレスに甘んじる生活をしている者であっても、「再び復活できるシステムが備わっているかどうか」、そして「自分の責任で不測の時代に常の備えておくリスク管理の考え方が徹底しているか」にあると思う。アメリカは、その点において日本よりは進んだ見習うべき面があることは確かだ。

宋氏がせっかくボストンに住まわれているのなら、ちょっと足を延ばして、コロラド州のデンバーあたりを観光することをお勧めする。ニューヨーク、ボストンやカリフォルニアでは感じられない本当のアメリカの豊かさを感じられると思う。
Posted by 大木みきお at 2018年06月23日 14:54
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