終わりの意識

「もう年末か、早いな。」毎年言っているような気がしますが、言ってしまいます。

年末を意識して生きていないからです。昔、お正月はごちそうを食べて休んで楽しいことができる貴重な日だったので子供から大人まで早い段階から年末の到来を待っていました。だから「早くこいこいお正月」、「もういくつ寝るとお正月」という歌があるのだと思います。

たぶん一生もそんな感じだろうと思います。人間は早いうちからなかなか自分の死期を意識して生きていないものです。平均寿命を知っていても中年の人は自分と関係あると思わないでしょう。70歳後半の人が「なぜ貯金するのか」と聞かれると「老後のため」と答える人が多く、人間は老後であっても老後の自覚がないため、ついつい死期に気付かないのです。

某経営者先輩は80歳近くなってもなかなか引退しません。いつものように会長や顧問になってもそれは単なる言い訳で人事などの重要な権力はしっかり握っています。たまに経営上の悩みをあれこれ相談してきますが、一番進言したいのは会社を離れて奥さんと世界旅行することです。

どうも奥さんも私と同じことを考えているようですが、なぜかご本人はとても権力を手放す気がないようです。

マスコミから鉄道会社まで、電機メーカーから電力会社まで、日本企業の衰退要因は企業の保守性ですが、その保守性の要因は企業のトップ人事です。企業のトップ人事は死期を意識しない人たちに握られてきました。終わりを意識しない人こそ最強の保守派であり、根本から革新意識を遮断しています。

人間の最大の特徴は自己中心です。いろいろな綺麗ごとを言って誤魔化すのですが、人間の生物としての生存本能ですから誰もそこから逃げられません。しかし、実際には誰も世界の中心になれませんし、誰が死んでも翌日の世界は何も変わりません。

終わりが来ると意識すれば、人間はもう少し自分の意識の外から自分の存在を眺めることができると思います。形式のお葬式が行われるが、翌日の周辺は何一つ変わらず通常通りに回転する。どうせそうなるのだから誰を偉くするか、誰を降格させるかではなく、もう少し自分をどうするか、自分の人生をどう楽しむか、一生をどう終えたいのかを考えるべきだと思いませんか。

「終わり無き戦い」と立志の書を読むとよく出てきますが、それは立志のためのセリフです。人生が終わる以上、その人にとってすべて終わるのです。他の人が引き続いてどうやるかは他の人の自由であり、死んでいく人は心配する必要はありません。むしろその心配が言い訳になり、自分の終わりを認めず、社会の迷惑になるのです。

終わりがあるから始まりがあります。落日があるから旭があります。終わりの意識こそ、改革を促すのです。

とてもめでたい話ではないのですがお許しいただきたいと思います。宋メールが最近めでたいことを滅多に言わないということは、この宋メールもいずれ終わりにしないといけないことを示唆しています。

皆さま、良いお年を
この記事へのコメント
今回のメルマガは最近自身が考えていることと一致していたのでコメントさせて頂きます。

私は今年50歳を迎えた会社員です。
誕生日近辺になって、自分の人生を75年とした場合、2/3が終わるのかと意識するようになりました。すると次に、残りの25年をどう過ごしたいか、何をしたいかと考えるようになりました。

一旦、目標設定が出来ると後は目標達成までにしなければならないことや時間を無駄に出来ない意識が生まれてきました。今では目標達成のための習い事を始めています。(「六十の手習い」には10年早いですが)

私は会社員なので黙っていても定年を迎えますが、今では定年を待たずに新しい世界へ飛び込もうと考えるようになり、終わりを意識したことで正に(自分の)改革が始まったと実感しています。
Posted by すーさん at 2017年12月22日 18:52
 宋メールが終わるのはとてもさびしいので、できれば続けてほしいです。でも、もし私が日本に生まれていなかったら、日本のことなど見向きもしませんけどね。
 私はここ数年、半分引退しているのですが、人はお世辞のつもりなのか「頑張ってください」とか「活躍してください」とか、挨拶がわりに言います。しんどいです。本人はつつましやかな海外旅行などをたのしんでいるんですけどね。
 宋さんも、良いお年をお迎えください。そして、またメールをくださることを心待ちにしております。
Posted by SH at 2017年12月22日 22:00
いつも期待を裏切らない宋さまに畏敬の念で、コメントを書かせていただいています。
おっしゃる通り、必ず起こること、それは「死」です。
いい「死」を迎えるために、今日もいい「生」を生きていきたいとの勇気をいただきました。
ありがとうございました。
「この宋メールもいずれ終わりにしないといけないことを示唆しています。」と文末に書かれていますが、そんな悲しいことを言わないでください。
命ある限り続けてください。
(ちょっと厳しいかな?)
期待しています。
Posted by タイラタダシ at 2017年12月23日 08:30
宋さん、いつも心に沁みてます。ありがとうございます。
今日のは、そうだ!と、いつも以上に響きました。
ありがとうございます。辞めるとかいわずに、死ぬまで好きなことを書いてください。読ませてください。お元気で!ありがとうございます。
Posted by 渡部恭一 at 2017年12月23日 17:52
浅学の身でも、欲に囚われると終わりが見えないことは分かります。
特に日本の中小企業ではよく聞く話であります。
経営者や経営陣が企業を私物化すると、当然自社は
自分の持ち物に過ぎません。
利益や所得の増大は欲を満たす原動力かと思います。
かと言って、従業員も経営者や経営陣に従っていれば、
責任をリスクヘッジできる旨味は出てきます。
よく言うサラリーマンに徹すると言うやつでしょうか。
雇う者も雇われる者も依存しつつ、終わり無き欲が続く
ことがあります。
終わり無き欲を見切れるかどうかが、肝要かと思います。
企業経営のみならず、いろいろありますが日本人は生きる
中での覚悟を見失っているのでしょう。
見えないものを見えるようにできるという意味で、
宋文洲さんのブログは勉強になります。
このブログが続くことを希望致しております。
Posted by T.hongoh at 2017年12月24日 14:23
問題提起としては優れていると思います。
しかし、重要な観点が忘れられています。
引退しない経営者は、自分の後に会社が潰れては関係者みんなに迷惑を掛けると思って、心配でならないのです。自分が引退して終わりと思うなら、目先の結果だけ出して状況が悪化する寸前に辞めればいいのです。まさにアメリカ式の短視眼の経営というやつで、日本ではとても悪いことになっています。「立つ鳥後を汚さず」という言葉もあります。
このあたりを掘り進んでいただければ、もっと説得力が出ると思います。
Posted by なめーる at 2017年12月25日 08:44
宋様
いつも真言を日本人のために記載頂きましてありがとうございます。本ブログは日本人の心性を正しからしめる役割があります。
ネトウヨのような知識の無い人には理解されず、誹謗中傷なども多くあると思います。
日本人としてお詫びいたします。
先生のブログが、一人でも多くの人の心の目覚めのきっかけになれれば良いと思っています。
Posted by コウサイ at 2017年12月26日 15:04
宗様、はじめまして。
会社勤めの後、独立して自営業を営む50代後半の日本人男です。

老経営者の居座りが日本の病根となっているとのご論説、大いに同感です。
全能感を手放せない経営者の「あともう少し」が他の役員や管理職層に伝染した結果が、この閉塞感であるように思えてなりません。
恍惚とした麻薬中毒患者が療養所に溢れ、面倒を見る健常者が疲れ切っている、そんな光景です。

薬物中毒の原因のひとつは孤独、との説があります。家族や恋人のいる米兵は、帰還後に薬物依存から抜け出し易いとも(文末ご参考まで)。
もとより経営者は孤独なものですが、近代日本の夫唱婦随的な夫婦関係は、更に拍車をかけて男性経営者を孤独にするのかもしれません。
有効なリハビリプログラムを作れば、と考え、いや誰も参加しないか、と思い直しました。

ただ、経営中毒が居座りの原因なのであれば、未来は明るい。なぜなら、今の若い夫婦は「夫唱婦随って何?」という世代だからです。居座りはなくなっていくでしょう。ゆっくりですが、新陳代謝は進んでいます。今しばらく世界のレースには置いていかれるでしょうが、そんな時もあります。50代の老頭児としては、若い層の邪魔をせず、背中を見せるレースを続けていこうと思っています。

宗様にはいつも澄んだ視点からのお話を聞かせていただき、大変感謝申し上げております。ともすれば狭い世界に閉じこもりそうな小生の視野が広がり、有り難いことです。
不愉快なことも多々おありかと拝察しますが、ご辛抱のつく限り、本メールマガジンをお続けくださいましたら幸いです。
どうぞ良いお年をお迎えください。

[ご参考:薬物中毒と孤独]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2732004/
http://www.addictioncampuses.com/resources/addiction-campuses-blog/addiction-isolation-and-the-cycle-of-loneliness/
https://www.youtube.com/watch?v=ao8L-0nSYzg&feature=youtu.be 等々
Posted by 小田 令 at 2017年12月26日 20:21
先日の精神論や経営者が引退しない強欲さなどの背景にある考え方は、日本人の「合理性」に対する思考力の弱さだと思います。
いつからそうなったのかはよくわかりませんが、理念もなければ合理性がないままで、やっかみと精神論が幅をきかす日本は、これからもだんだんとダメな国になっていくと思います。
そこをあえて中国人であるという立場から宋さんがいろいろおっしゃってくれていますが、コメントを読んでもほとんどの人は日本人以外にはわからないという説明不能のいいわけをしながら、問題提起は他人事であって自分のことだと考えていない人がとても多いように感じます。
この国で独立して合理的に働けば、いくらでもビジネスチャンスはあるのですが。
日本は産業という意味では今後も粛々と世界の順位の階段を降りるしかないと思います。
Posted by たかお at 2017年12月29日 10:28
宋メールを読み始めてからずいぶん経ちますが、初めてコメントいたします。

今年、我が母が亡くなりました。人生に終わりがあることを強く意識し直した年でありましたが、本日、四十九日法要を終えた日にたまたま今回のメールを読み、いよいよその思いを新たにしました。

人生に終わりがあることは幸せなこととも思います。良いタイミングで良いテーマの記事をありがとうございました。
Posted by 伊藤雅史 at 2017年12月29日 22:33
終わりだなんて寂しいことおっしゃらないでください。何年も購読している私のような人間も多数いるのです。
普通の人間は宋さんのように頻繁に海外に行けません。世界でなにが起きているのかはニュースで、出来事や事件でしか知ることができません。ムーブメントや思考の変化は現地に行かないと、わからないのです。
宋さんのメルマガには本音しかないのがいいですし、ときにこちらの視野の狭さや幼稚さに気づかされ、恥ずかしくなるときがあります。それがいいのです!
宋さんの日本にいながら世界視野を広げてくれる貴重なマルマガ、私はずーっと読み続けます。
Posted by さとし at 2018年01月14日 14:29
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