邪魔な感情

年末になると早速、来年の予想を聞かれるようになりました。2年前の上海市場の暴落、今年のイギリス国民投票や米国トランプ大統領選について偶然にも私の予想が当たったため、「来年はどうなるか」と聞いてくる方が多いのです。

経済や政治に関する予想は基本的に確率の問題です。天気予報よりもかなり当たる確率は低いのですが、自信満々に「必ずこうなる」と予想する方々が多いのです。外れても外れても予想を行う方の予想は、願望と詐欺の混合物に過ぎないのですが、外れても損しないからいつまでもやめません。

私は投資の都合上、懸命に世の中を観察し、不安でありながらも日本、中国、米国などの主要国の動向を予想するのです。自分の切実な損得にかかわるため、思い込みは禁物です。トランプ当選の確率は50%あると思っていましたが、これはもう相当不確定的です。トランプが勝利と想定して投資することはコインを投げて命を懸けるようなものです。

それと天気予報などの自然界の予想と違って、人間社会の予想はその予想対象である人間が主体として予想を行うため、乗っている箱を持ち上げるような部分があるので予想不可能の側面があるのです。

このことは古代中国では「傍観者清、当事者迷」と表現しているのです。システムに関わる人間はそのシステムへの判断をよく間違えるのです。システムと無関係の傍観者の方がよく見えるのです。日本でいう「岡目八目」でしょう。

これはつまり予想の精度を上げるには関係や感情を持たないことが必要ということです。しかし、無関係や無感情の社会について予想する意欲を持つ人は極めて少ないのです。一番多く予想を行う対象は二種類しかありません。最も好きな社会と最も嫌いな社会です。だから評論家の予想はコイン投げよりも確率が悪いのです。感情が入っているからです。

予想だけではありません。行動の成果もそれほど情熱と欲望などの感情に依存しません。確かに情熱をもって努力することは目的を成し遂げるにはとても大切ですが、一番大事なのはその目的を達成するための環境と条件がそろっているかどうかです。孫氏がよく「天の時、地の利、人の和」の順で説明したように、人間のファクターはもう最後です。しかも、「人間の和」です。

ここでは個人(リーダーを含む)の意思や意欲がほとんど評価する必要がないほど重要ではないのです。

本当に結果に責任を持つ人は感情を殺しています。感情がないわけではありません。結果のため、責任のために自分の感情を殺しているのです。

感情でマーケットを評価しても構わないのです。損するのは自分です。実際に自分のお金を張っていないから間違っても平気です。感情が入っているように見えますが、他人に対して無責任と無感情です。

部下を感情で評価するのは確かに気分が良いかもしれませんが、有能な部下が辞めたり、やる気が無くなったりすることで損するのは会社です。自分は損しません。結局会社への責任と愛情はなく自己愛です。

お客さまを感情で選ぶと確かに商談は楽しくなりますが、新規顧客や利益率の良い顧客が少なくなります。その結果として会社の業績が低下し、自分も早晩悪い影響を受けます。

本当に感情の無い人は存在しません。結果と目的のために自分の感情を殺して世界を予想し部下を評価し顧客を開拓するのはリーダーであり、成功する人です。

年末に際して一年を振り返って感無量な方も多いと思いますが、思い切り忘年会などで感情を爆発させて来年の感情コントロールのためのエネルギーを蓄積しましょう。
この記事へのコメント
まさに、この時期、来年に向けて惑っていた自分にぴったりの内容でした。
プロジェクトを抱えています。先行もいて、自社の優位性も確実ではなく、不安でそうだんしてまわってました。
腹を決めると決めたのは、最近です。
何を調べても、誰に聞いても答えがないとわかったからです。
本日の内容。感情を殺す。
腹を決めるとはまさにそう言うことのように思います。岡目八目より、傍観者清、当事者迷、が、しっくりきます。ありがとうございます。
Posted by こぶた at 2016年12月22日 08:13
いつも楽しく拝見させていただいております。
末尾から3行目の「時分も早晩悪影響を受けます」
は、「自分も…」の変換ミスではないでしょうか? ご参考まで
Posted by 安藤和美 at 2016年12月22日 08:32
メルマガをいつも楽しく読ませていただいています.

本筋とはあまり関係ないのですが「経済や政治に関する予想は基本的に確率の問題」ではないと私は考えます.

確率というのは(少なくとも中学高校で習う確率は)何度も繰り返し試行を行なって(あるいは行ったとしたら)得られる結果について述べる(予想する)ことです.

しかし「経済や政治」は一度きりの事象ですから,「基本的に確率の問題にはならない」はずです.

気になりましたのでコメントしました.
Posted by 浮田 昌一 at 2016年12月22日 09:14
”盗みも騙しも悪いと思わない人”とかいう本、読んだ事ありました。自分に都合のいい一面的なものの見方しかしない人。  神社に鏡がありますが、あれは神の目、遠くから自分を見てる。時空を超えた?視界から自分や、社会や物事を見る目。鏡に向かい、目を閉じて暫し手を合わせる一時も、大事にしたいと思います。
Posted by 末永美枝子 at 2016年12月22日 09:15
宋さんは人に偉そうなことを言う前に、自分を省みる必要があるでしょう。「朝まで生テレビ」で三浦瑠麗氏に向かって「オマエには聞いてない!」と言い放ったのは記憶に新しいところです。感情を抑えろなどという資格はありません。
Posted by H.Mari at 2016年12月22日 09:15
今回、宗さんがお書きになった事で、自分の気持ちがスッキリしました。
私も宗さん以上にトランプ氏有利と分析していましたが、すべてのマスコミがトランプ氏を軽蔑したり攻撃したりしているのを見聞きして、完全にマスコミ不信に陥っていました。政治、経済(最近は社会面も醜い)について発言者の言動に感情が多く入っているか否かを今迄以上に峻別すれば、私のイライラも減るのですね。
それにしても最近、特に目立つのが、マスコミが重要で肝心な部分を(これも感情的にという事なのでしょうか?)カットして伝える事です。ニュースソースを検証すればすぐにばれるだろうに・・・
Posted by Pooh at 2016年12月22日 10:36
孫氏がよく「天の時、地の利、人の和」の順で説明したように、とありますが孫子の事でしょうか?
この故事成語は、
「天の時は地の利に如(し)かず。
 地の利は人の和に如(し)かず。」
(原文)天時不如地利。地利不如人和。
 孟子より
と聞いていますが。
Posted by 信繁 at 2016年12月22日 11:11
浜矩子に読ませてやりたい文章ですね。
Posted by みんみん at 2016年12月22日 14:27
「本当に結果に責任を持つ人は感情を殺しています。感情がないわけではありません。結果のため、責任のために自分の感情を殺しているのです。」
という文に、今年赤穂浪士のドラマを見て初めて感じたことと同じだ、という気持ちになりました。主君の恨みを晴らすという義士の物語に、忠誠心や信義の厚さに素直に反応してきました。しかし今回は、部下(義士)のことを思えば、刃傷沙汰など決して起こしてはいけない行動であったと思ったのです。
お家断絶や部下に起こるであろうことを考えれば、浅野内匠頭は、気持ちを抑えるべきだったのに・・・・・と感じました。とはいえ、会社員時代の自分ことを思い出すと、少々顔が赤くなります。
Posted by 長坂 弘文 at 2016年12月22日 14:34
『孫子がよく「天の時、地の利、人の和」の順で説明したように、人間のファクターはもう最後です。しかも、「人間の和」です。』の部分がよく理解できません。分かる方教えてください。
Posted by 退屈夢想山人 at 2016年12月22日 14:48
今年も一年間ありがとうございました。
最後の最後に、素晴らしい話を読ませていただきました。
来年も、引き続きよろしくお願いいたします。
Posted by 小池道子 at 2016年12月23日 11:42


日本の政治家は、何もしませんでした
ただいたずらに、外貨を使い込み
資本にせず、じゃあそれを国民に還元したのかといえば一部に与えて、原価率に応じた
回数が終わって多くが貧乏でした
かいがいの方らは無駄遣いをせず資本にして
成長させられました
それでも日本人は日本の政治家を正義と信じていました。
日本の政治家は、今まで散々、海外の方らを
批判して、憎しみを植え込み、民衆に恨ませて
自分らはひとかけらの憎しみも批判もなく
子子孫孫、人気制度で安泰です
こんなひどい奴らがいるんでしょうか
Posted by t at 2016年12月25日 23:12
宋さん、今日のメール(今後の存続が危ない)
を見て残念に思います。
ネイティブ日本人とは違う視点でのお考えを聞
けるので、毎回楽しみにしていました。
今後も色々と活躍されると思いますが、取りあ
えずのお礼を言いたくて書き込みをしました。

お疲れさまでした。60歳過ぎの男性より
Posted by ファンでした at 2016年12月26日 08:18
メルマガをいつも楽しく読ませていただいています.
有り難うございます。
今朝宋メール継続問題を知った途端、ショックです。ぜひ別の形でも、継続お願いします。
そして、良いお年を!
Posted by マイ at 2016年12月26日 08:27
人は自分の望む未来を反映して未来予測をしてしまう。
身近な事でも希望的観測をしてしまいます。
今回のメルマガは、当然のようなのに、ふと気がつくと陥ってしまうことを戒めて頂いたように思えます。
そうさんのお宅の猫さんがお亡くなりになったお話については、心よりお悔やみ申し上げます。
このめーマガジンもなくなるかもしれないというお知らせをいただきましたが、最後にありがとうございましたといわせて下さい。
Posted by さいとうゆきこ at 2016年12月27日 00:49
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