自他に分かる日本語を

「PPTについてどう思いますか」。「そうですね、最近は揉めていますね」・・・皆さんはこの会話をどう思うでしょうか。「PPTではなく、TPPだよ」とすぐ気付く方がどのくらいおられるでしょうか。

PPT、TPP、TTP、PTT・・・英語力は平均より上だと思う私ですが、TPPをしっかり言えるようになったのは最近のことです。なぜ「太平洋協定」のような覚えやすく、中身と本質を分かる日本語を使わないでしょうか。

FTAでもTPPでも私はグローバル競争に参加するあらゆる仕組みには賛成です。しかし、先週後半から急にTPP交渉に疑問を持つようになりました。ツイッターなどを通じて多くの方々がTPPの最も基本的なことも分かっていないことに気付いたからです。

経済と交易の環太平洋といえば、経済規模から見ても、日本との交易量をみても中国、韓国、ロシア、香港、台湾などはとても重要なのです。しかし、これらの国はTPPに入らないのです。「環太平洋」ではないのにTPPといって誤解のままでの参加交渉は不自然だと思うのです。

現状では米国に交渉力を持つ国が誰もTPPに入っていないのです。主要国のうち、日米だけが参加する経済協定は日米経済同盟に映るのです。それを理解した上で参加するならよろしいのですが、「皆が入っているから」というプレッシャーに弱い国民心理を利用してのダメ押しは危険です。

「中国が参加しないから宋さんは反対するでしょう」と思う方が居るかもしれませんが、私のツイッターをチェックしていただければ私は先週まではずっと賛成してきました。急に反対を始めたのは名前と中身さえ一致しないことに気付かれない中、とにかく交渉参加に急ぐ「焦り」の姿勢です。

経営コンサルタントをやっていた頃、某大手企業の常務に社内幹部向けの講演を頼まれました。「どんな内容がいいですか」と聞くと「今年の当社のキーワードはイノベーション、チェンジとコンピテンシーなので・・・」と言われました。

安くない講演料のため責任を感じているので勇気を出して思い切って聞きました。「コンピテンシーの意味は分かりますか」。するとその常務さんが慌てて内ポケットから手帳を出して顔を赤くして「えーと、確か・・・」と説明を始めました。

分からないことを分からない外来語にしてやすやす流れに乗せたりする傾向が日本社会にあります。経営もそうですが、議論が五分五分でもリーダーは決断する必要があります。しかし、言葉の中身も曖昧なままの決断はどう考えても決断ではなく賭博です。

「コンプライアンス」にかかる手間が膨張している中、20年間も隠蔽して来たオリンパスの巨額損失が外国人社長の手で暴かれました。菊川元会長を初めとする一部の経営陣に必要なのはコンプライアンスという外来語ではなく、昔からあった日本の諺です。「嘘は泥棒の始まり」。

議論も決断も大事ですが、その前に最も重要なのは自他に分かる日本語を使うことです。
この記事へのコメント
日本人はなまじ空気を読む(ホントかどうかは別として)から、肝心な事も「分かった気になる」のが得意なのです。
人間関係に気遣い、腹を割って議論をしない。
結果、人間関係も修復不能状態にします。
曖昧さで分かった気になる事に酔ってしまうのでしょうね。
Posted by 小田々豊 at 2011年11月11日 09:07
宋さん、いつもうなづきながら読んでいます。僕は62歳になりますが、現役で光学設計をしています。光学設計は特殊な分野で、設計者は専門用語を使いたがる傾向がとても強いです(本当に意味が判っているか、多くの場合疑問ですが)。他分野の方との話も例外ではなく、「説明した」という自己満足状態が散見されます。20年前の転職を機に、極力平易な言葉を使う、短縮語は使わないことに気を遣ってきましたが、今回のご意見、同感です。まだまだ現役を続けると思いますが、心していきたいと思っています。乱文御免! Kim
Posted by 木村 正資(ただし) at 2011年11月11日 09:09
〉自他に分かる日本語を
仰る通りですね。日本に足りないのは英語の環境や教育ではなく、日本語の教育機会だと思っている29才です。
Posted by hato-ken at 2011年11月11日 09:23
はじめまして、こんにちは。
宋さんのメルマガは、毎週期待して読んでいます。
今回のご意見、まったくそう思いますので、
応援メールを送ります。
マスメディアなどに氾濫する横文字は、定着して使えるものもありますが、なかなかすっきり浸透しないものもあり、仰るように、出来るだけ判り易い日本語で表記されたらと思っておりました。
多方面に影響力のある宋さんが、これからもどんどんと意見を仰って頂ければと思います。
Posted by 新田 みさ at 2011年11月11日 09:28
冒頭の「PPTについて〜」を純粋にパワーポイントについて(拡張子が.ppt)の話かと思って読み始めました。
講演会とかの一方通行はまた別ですが、会話は双方がその言葉に対してどういった理解をしているのかを確かめながら進めるのはとても重要なことだと思います。
同じ「ヘッダー」という言葉でも抱えている背景によってイメージするものが違う。
Posted by めいきち at 2011年11月11日 09:43
いつも読むのを楽しみにしています。
さて、言葉についてですが、所詮言葉もいいかげんで、日本語だから理解できる・・とは言えません。意味を理解しようとする姿勢と理解してもらおうとする姿勢が当事者間で必要なのだと思います。本当は、言葉の裏にある心が通じればよいのですが。
誰もが「嘘は泥棒の始まり」を知っています。でも、何故人は嘘を付くのか、それを思いとどまらせる心の準備は無いのか・・それが真因と対策のように思えます。
Posted by Tora-san at 2011年11月11日 09:51
そうですね。話す場合はわからなければ聞き直せばいいし、表情、手振りなどで理解できることも多いです。
しかし、メールがこれだけコミュニケーション手段として成立している今、意味のある日本語が書けない人は多数います。話すように書いて、意味を推測してくれ、という甘ちゃんは勘弁して欲しいと思います。
そのあいまいな発想で、英語なんてムリっす。
Posted by たかお at 2011年11月11日 10:12
私たちSEの用語もアルファベット略語が多く、言葉の空洞化を感じています。
中国語は、英語を輸入する時には新しく言葉を作っているんですよね?『網道』や『界面』など。

日本でも明治ごろやっていたように、外来語の翻訳にコストを掛けて取り組む必要があるのではないかと感じています。
Posted by satrex at 2011年11月11日 10:26
宋さんの主題とずれますが、TPPについて、その参加交渉の判断をいまする事に反対です。
@条約内容がはっきり理解できてない。
A賛成論者はTPP以外では達成できないと
 言ってるが 、代替案は示されるべきだ。
B反対論者は、現状対比ではなく、将来の
 日本が必要とするシステムに対するアプロ ーチも語るべきだ。
 これらの観点から、判断時期が拙速であろ うとの結論を得ます。
Posted by 国井義康 at 2011年11月11日 11:14
「わかりやすい」ことはよく言えば「平易」、悪く言えば「平凡」。「みもふたもない」言い方では我々上品な日本人には向かない。
また、「平易」な言葉は生半可の理解を招きかねない。
Posted by 得多一途 at 2011年11月11日 11:40
同感です。
新しい外来語のニュアンスが判らず仕事についていけません。
わからないままに仕事している人は多いのでは?

クラウドなるものにみんながやらなければならないと思い込んでいますね。
WEBデータベースサーバーとの違いを明確に答えられる人はどれほどいますか。
Posted by 浅田信介 at 2011年11月11日 14:12
そもそもTPP賛成論者は
農業はTPPによってたしかに安い農産物は日本に入ってくるが、高い農産物は売れるといいます。しかしこれは外国が不作になったら制限をかけられますし、不況になったら高い農産物なんて買いません。そこら辺の事を全く考えてないですし、質の良い工業製品を売れとも言います。そもそも日本の高い製品を米国以外のどこの国に売るつもりなのでしょうか。
次に何故か移民がうまくいくと思い込んでいる節があります。世界中で起きている移民問題がどうして日本ではクリアできると考えているのか。
そして「経済学には比較優位というものがあるんだ!」と言い出す人がいます。しかし比較優位が成り立つのは完全雇用の上でだ、と同じく経済学の教科書に書いてあります。
最後に「米国の陰謀はウソだ」なんていう人は、おそらくロビイストなんて言葉も知らないんでしょう。
NAFTAで起こった事、韓国米国間で問題となっている事にきちんと目を向けるべきです。

10年間でたったの2.7兆円しか効果がないものに参加するメリットとは何か。エコポイントは6700億円で5兆円の経済波及効果があったと言われています。本当に内需には期待できないのですかね。不思議です。

民主党は政権を取った時も、政権奪取が目的で将来のビジョンが有りませんでした。そんな所がTPPに参加して、どう有利に外交を進められるのでしょうか。主権国家なのだから対等な立場で外交は行えるし、そう有るべきだ。これはあまりにも稚拙な絵空事です。

ラチェット規定もあり、これは小さな問題ではありません。国民のよくわからないウチに勝手に進めてしまおう、という小泉・竹中時代の流れを二度と繰り返してはいけないと思います。
Posted by 高橋 和也 at 2011年11月11日 17:15
毎回、わかり易い日本語でわかり易いコメントを拝見し、感謝しています。
ご指摘の通り、今回の争点は、
@ 「環太平洋」ではないのにTPPといって誤解のままでの参加交渉に無理がある。
A TPPという、なかなか簡単そうに見えて一般用語になりなりくい略語で、イメージしかとらえられない、中味がとらえられにくい言葉が日本語にどんどん増えている。
B 本来私たちが日常的に学びや遊びで身に着けてきた価値観とかけ離れて、マニュアルに先行されて、ぎこちなく行動している場面が多い。よその国の言葉で書かれたようなマニュアル化でなく自分や自分たちの使い慣れた言葉で表現したい。
と、いったところでしょうか。

身近なところから変えてみると、一杯変えれるように思います。専門家に求めないで、勉強しなければ・・・
Posted by 南野 幸子 at 2011年11月11日 21:31
毎回、わかり易い日本語でわかり易いコメントを拝見し、感謝しています。
ご指摘の通り、今回の争点は、
@ 「環太平洋」ではないのにTPPといって誤解のままでの参加交渉に無理がある。
A TPPという、なかなか簡単そうに見えて一般用語になりなりくい略語で、イメージしかとらえられない、中味がとらえられにくい言葉が日本語にどんどん増えている。
B 本来私たちが日常的に学びや遊びで身に着けてきた価値観とかけ離れて、マニュアルに先行されて、ぎこちなく行動している場面が多い。よその国の言葉で書かれたようなマニュアル化でなく自分や自分たちの使い慣れた言葉で表現したい。
と、いったところでしょうか。
身近なところから変えてみると、一杯変えれるように思います。専門家に求めないで、勉強しなければ・・・
Posted by 南野 幸子 at 2011年11月11日 21:37
宋さんのご指摘の通りです。カタカナ表示、アルファベットの略語多用には私も怒りに近い感じを覚えます。特に分からないのがIT関係。専門家からすれば勉強が足りないからと言う事かもしれませんが、単語だけでなく文章も分かりづらいので勉強も投げ出したくなります。
Posted by マスヤジ at 2011年11月11日 23:28
言葉を大切にしたいです。今一度カタカナ言葉のもつ意義を再確認したいです。TPPも、再度日本語にしてその意義を国民が再確認して、それから議論しましょう。拙速は避けるべきです。それで多少時間がかかっても許容されるべきです。震災復興とはわけが違います。
今回の宋さんのご意見には強く同意いたします。
 TPPは、もっと考えましょう。代替案がないかどうかももっともっと真剣に考えるべきです。今まで代替案を考えたことがあったでしょうか。やっと国民が問題意識を持ち始めた良い機会です。もっと考えませんか。
Posted by 赤沼 睦 at 2011年11月11日 23:48
初めて書き込みます。
特に年配の方が、時代に遅れていないことをアピールするため、組織や団体が時代を開拓していることをアピールするために、意味の分からないアルファベットやカタカナ語を使いたがるがあると感じています。
以前、市町村合併の建設計画を策定しているときに、誰にでも分かるように日本語のみで文章を書いていたら「クオリティが低い」とクレームがついたことがあります。
誰にでも分かる平易な言葉を使える人が、本当に言語能力の高い人だと思います。
Posted by さわむら at 2011年11月12日 09:28
おはようございます。
母国語を大事にすることは非常に大切だと思います。TPPといった表現を使うと偉くなったような気がするのだと思います。
ちなみに私は出来るだけ日本語を使うように心がけています。
もちろんアメリカで日本語にこだわるのはただのわがままだと思いますが・・・。
ありがとうございました。
Posted by ごろんた at 2011年11月12日 09:34
まさにそのとおり!
と、感心しております。
かくいう自分もPPTにひっかかってしまいました。恥ずかしい限り。
しかしTPP議論も重要でしょうが、円高問題はもっと深刻だと考えますが、意外に世間で重要視されないのはどうなんでしょう。
Posted by 星野智春 at 2011年11月12日 12:51
いつにもましてすっきり致しました。日本にいて日本語もまともに言えないのに、英語を勝手に和製英語にしたりして言う事、とても疑問に感じていました。母国語を大事にしないからどんどん日本語が乱れてきています。今、謙譲語尊敬語、を使い分けることに自信のある人はどれくらいいるのでしょうか?若い世代は「ら抜き」など「~の方」など意味不明の暗号会話、特に日本語教師と言う職業柄ばかりでなく、皆できれいな日本語を継承して行きたいと思います。
Posted by 村川國忠 at 2011年11月12日 13:33
先回は宋さんの発言にはやや批判的なことを申し上げましたが、今回の発言には概ね賛成します。
 私も、日本が貿易立国である以上、一部の産品に高い関税をかけるような、広域的な自由貿易を阻害するようなことを続ける訳にはいかないと思っており、TPPに参加することは基本的にはやむを得ないと思っていますが、やはり日本政府の準備不足が問題であり、現時点では賛成しかねます。 
 交渉はこれからだから、と具体的な説明を避けているようですが、今の時点でも明らかになっていることはたくさんあり、早期に対応策を立てておくことは重要です。 特に農業政策について、政府として明確な方針を出す必要があります。 農林業を魅力ある産業にしなければ農業従事者の高齢化を防ぐことも、また食料の自給率を確保することも難しいのです。 世界の人口が増え続けていく中で、近い将来必ず国際的な食糧問題は起こってきますので、輸入に頼る政策は否定されなければなりません。
 なお、アルファベットの略語が多いことは今に始まったことではなく、以前からUNESCO、NASA、NATO、OECD、IMF等々そのままの言葉で通用しているものも数多くあります。 用語でも簡単な日本語に訳するのが難しい用語もあり、英語のままの方が良い場合もあります。 今回例に挙がった「コンピテンシー」もそうです。 無理矢理日本語にすれば、「高業績行動特性」とでも言うのでしょうか、かえって分かり難いように思います。 
 なお、逆に日本語が世界共通語になっている場合も少なからずあります。 「もったいない」とか「すき焼き」「寿司」、それに「津波」とか。 中国語でも文字こそ漢字を使っても、発音は英語のままであることも少なくありませんが、ところで宋さんは中国での簡体字について、どうお考えでしょうか。


Posted by けいちゃん at 2011年11月14日 15:56
宋さん、こんにちわ。
毎回楽しく読ませて頂いてます。

本当に日本は市民を騙すおかしな英語が多いと思います。日本語できちんと説明すればいらないのに、カッコイイからとか頭が良さそうに見えるからという理由で乱用されていてとても不快です。
高校生の時にこういった言葉を覚えさせられましたが、覚えさせた先生ですらきちんと説明してくれなかった事を思い出しました。

TPPに関しても報道はされてますが、TPPの中身の説明が全くされていません。この状況で交渉参加に賛成か反対かという議論だけが進んでしまっておかしいと私も思います。
頭を使って考えてから答えを出す事ができないって非常に怖いと思います。

みんなが参加してるからなんて理由だけで参加するのはやめて頂きたいです。
Posted by まいこ at 2011年11月27日 10:28
こんばんわ
いつも宋さんがテレビに出ていると必ず見ます。今夜も7〜9の8chを途中からみました。あなたはさすがに国際人で、いつも客観的にものごとをみて発言しますね。
だから私は宋さんが大好きなんだ。なんだか宋さんを見ていると孔子や孟子のいた時代の人を見ているようで身体中から哲学のほとばしるのを感じますよ。日本にリーダーが生まれないのはあなたの言うとうりです。であるからこれから日本は真の保守を作らなくてはならないのです。
真の保守こそ中国や朝鮮半島と本音でものを言い、仲良くやっていけると思います。
とにかく今日はこの辺でまたお便りします。
Posted by 越谷 公俊 (コシタニ マサトシ)  63才 at 2012年01月17日 22:01
>>得多一途
>>「わかりやすい」ことはよく言えば
>>「平易」、悪く言えば「平凡」。「み
>>もふたもない」言い方では我々上品な
>>日本人には向かない。
>>また、「平易」な言葉は生半可の理解を招きかねない。

失笑滑稽しきりだ。
平易な言葉ですら、生半可どころかまったく理解できてない脳貧な日本人がなにをほざく(笑)
平凡な言葉すら理解できないのにどうやって「難解な」言葉を理解しようというのだ?(笑)

Posted by 日撃公子 at 2012年02月28日 03:54
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