経営者はしつこい

私の経験上、経営者、中でも経営上手な社長は異性からモテます。「お金を持っているんだから当然」と思うかもしれませんが、実は、お金の多寡はほとんど関係ありません。彼らがモテる最大の要因は、その「しつこさ」にあるのです。

一連の森友学園騒動で安倍総理は籠池理事長を「非常にしつこい人」と称しました。悪口のようにとらえる人もいましたが、私は「何を当たり前のことを言っているのだろう」と思いました。経営者は皆、「しつこい」のです。

「商い」と「飽きない」の言語上の関連性があるかどうか分かりませんが、経営は飽きないこと、諦めないことが最も重要です。取引先のニーズと意向をつかみ、何度も何度も商談を提案できる人こそ、デキる経営者。相手に迷惑ではないかと気後れする人もいますが、本当に相手が嫌がっている場合は面会を拒否されるはずです。

至極シンプルなことですが、頭で理解できても大多数の人は実行できません。道に迷って周囲に聞けばすぐにわかるのに、何時間も迷い続ける人と同じです。こうした人は、他人の反応を必要以上に重く受け止めてしまっているのです。

モテない男性の最大の原因は女性にアタックできないことです。道に困っているのに尋ねられない心理と似ています。「断られたらどうしよう」と先に心配して行動に移せないのです。

実際、どんなに条件が揃った男性でも待っているだけでは、なかなか女性は寄ってきません。当然、どんなイケメンやお金持ちだって、声をかけてOKをもらえる保証は一切ありません。拒否されるケースもあります。

しかし女性にモテたいならば、まず女性に声をかけないと始まりません。断られることを恐れないことです。相手の迷惑にならない範囲で、多くの女性に声をかければ、より多くの女性に出会えます。より多くの女性と出会えれば、いい条件の女性(つまり自分と相性が合う女性)が見つかる可能性が自然と高まります。

ビジネスでも同じです。デキる経営者になるためには、女性へのアタックと同様の努力を毎日続けなければなりません。条件の合う顧客に出会うことは事業強化に何より必要です。また、良質な社員と出会うことは組織強化、投資家と出会うことは事業拡大の基本です。「断られたらどうする?」と心配して動かなければ、社長としての基本を身に付けられません。

女性にモテるはずのない容姿の私でも、貧乏な頃から、それなりにモテました。外見の短所を補うため、いや補って余りあるほど、積極的に女性に対し働きかけたからです。今でもそうですが、私も声をかけて断られると傷つくタイプでした。ナンパ大作戦は、そんな弱気な自分を叱咤激励する意味もありました。

北大の大学院生時代、私は札幌市北区のバス停で、「一緒にお茶でもどうですか」と女性に声をかけ続けたことがあります。ご想像の通り、なかなかナンパは成功しません。しかし、50人以上に声をかけた頃、「お茶だけならいいですよ」という女性に出会いました。すごく綺麗な女性でした。彼女は友人を迎えに来ていたのですが、時間を間違えて、一時間早く着いてしまったそうです。

このナンパ大作戦は、私の自信につながりました。創業後、営業活動の指針となりました。経営者としての「しつこさ」はナンパで鍛えることができるのです。


P.S.
今週は私のミスで原稿を用意することが遅れました。無理やり何かを書くよりも、週刊文春の連載で以前掲載した文章を借りることにしました。文春で既に読んだ方々には申し訳ございません。

足を使って自分を変える

私が日本に来た時、中国にいる恋人と別れました。それまでに恋愛と別れの経験がなかったせいもあって留学の最初の1年間は大変つらかったです。

今、息子が同じ経験をしています。昨年から米国に行ったのですが、彼女との別れに苦しんでいました。息子が私と同じつらい経験をしたのは遺伝ではなく同じように遠くへ行ってしまったからです。

心理学者の統計によれば恋愛の成否には、両方の物理的な距離が決定的です。数千キロ離れたままの恋愛の成功率は極めて低いようです。つまり、恋愛の成功率は男女間の距離と反比例するのです。距離が近いほど成功率が高く距離が遠いほど成功率が低いというわけです。

人間は思うほど自分で自分の精神を支配していないのです。人間の精神を一番支配しているのは環境なのです。

以前イラン人の友人と宗教について議論したことがあります。「なぜイスラムを信じるのか?」と聞くと彼の答えは「神の意思だ。」でした。「もし私のように文化大革命の中国に生まれたらイスラムを知らないだろう。」と言うと「私はきっと神を探しに行くだろう。」と答えました。

彼の信仰を尊重するためにそれ以上の反論は止めましたが、私は宗教だけではなく、文化、習慣と思考パターンの殆どは人間が生きている環境に作用されていると思うのです。本当に個人独自に属するものはわずかではないかと思うのです。

ITバブルの時、大金を手にした知人の経営者が私の目の前で「お金の力はすごいね。買えないものはない。」と言いました。「俺も清貧などの道徳論が嫌いだが、俺が生きた中国の文革時代では金持ちが虐められ、お金の価値が皆無に近かった。」と伝えると「俺は日本人だから関係ない。」と言って逃げました。

この知人ともそれ以上の論争を止めました。実際にその環境に置かれた経験がないとなかなか分かってもらえないと思ったからです。「勝つまで欲しがらない」という「神風特攻隊」の環境を経験した日本人はたぶん私と同じことを言うでしょう。

話が飛びましたが、我々が日々考えていることの殆どは環境の産物であることを理解すれば、自分や会社を改革する際にもう少し効率が良くなると思うのです。

同じ人間、同じ環境にずっと身を置くと間違いなく異なる発想を持たなくなるのです。異なる世界に生きている人間のサークル、できれば異なる言語や異なる文化と宗教を持つ人間のサークルに入ってみれば良いです。全く異なる世界に少数派として身を置くとどれほど自分の「信念」が薄くて軽く見えるかを実感します。

「自分の信念を捨てなさい」という意味ではありません。全く異なる世界が目の前で、普通に合理的に、そして場合によって美しく展開されると自分の中に自然と変化が宿るのです。改革や革命のリーダーは異なる経験をしてきた変人異人が多いのはこのためです。

「孟母三遷」を知っている方も多いと思いますが、昔から人々は偉い先生や素晴らしい理念よりも環境が人間に与える力を知っていました。「かわいい子には旅をさせよ」諺の本質も同じだと思います。

ノウハウの本を読み、著名人の講演を聞き、社内研修を重ねるような「意識改革」は精神で精神を変える努力で、努力した気分になるのでしょうが、効果が薄いのです。気分が優れないなら、出かけてみる。やる気がないなら会社を変えてみる。人生がうまく行かないならば住む地域を変えてみる。

本当に自分を変えてみたいならば頭ではなく、足を使うのです。

自転車泥棒が居なくなった理由

子供の塾のため先週から北京に滞在しています。そこで、ここ最近の北京の変化をいくつか紹介します。

一番の変化は道沿いに置かれている共用自転車の量です。過当競争で歩道が塞がれることがしばしばあります。携帯で二次元バーコードをスキャンすると鍵がガチャと開きます。目的地に着いたら適当な場所に停め、鍵をかければもう終了です。1元前後(16円)の料金は携帯の電子財布から自動的に引かれます。

マンションの玄関を出るとすぐ共用自転車が見付かり、目的地の玄関前まで乗れることを考えると、2、3駅の距離ならば共用自転車が一番早いのです。車や地下鉄のように乗るまでの時間と降りてからの時間がないからです。

行き先が遠い場合、地下鉄が利用しやすくなりました。これまでは地下鉄を降りてから目的の建物が遠い場合、ついつい最初からタクシーや自家用車を使ってしまったのですが、駅にある共用自転車を使えば逆にちょうど良い距離です。そのため、北京市内は目にみえて渋滞が軽減され、空気の質も良くなりました。

昔から見慣れていた自転車ではありますが、「私は故障車です。5メートル先に仲間がいます。」と自転車に言われた時はショックを受けました。これは自転車ではなく、自転車機能が付いているスマート端末だと思いました。このサービスを提供している企業はリアルタイムですべての自転車端末の位置と状態を把握し、専用車で故障車の回収や不法放置の整理をやっているのです。

これはスマートシステムが如何に人々のライフスタイル、公共交通の在り方、そして環境や社会に影響を与えるかの典型的事例です。友人から聞きましたが、この頃自転車泥棒が居なくなったそうです。人々は自転車を所有する必要がなくなったため、自転車を盗んでも売れないからだそうです。そしてマイナス効果として上述の道が塞がれて邪魔である他、自転車の販売屋さんや修理屋さんが潰れていくのです。

もう一つ便利なサービスは「外売」です。街中の店にあるものを顧客の代わりに買って届けるサービスです。ある日、そのサービスを通じて近所のお店のお粥を頼んだのですが、私の携帯にすぐ担当者の顔、名前と携帯電話番号が表示されました。「28分以内に届く」、「店に入った」、「店を出た」、「今の位置はあなたから560m・・・」

消費者から一切料金を取らないサービスなので、この人達はどうやって儲かっているのだろうかと心配してみましたが、中国人のやることですから心配無用です。店から数パーセントを取れば十分に儲かるそうです。店も来店できない客を確保した上、座席を節約することができるため、得するそうです。

昨日は雨のため、子供を自家用車で塾に近い妹の家に送りました。携帯の無料ナビケーションに助けられました。「この信号はそのまま通り過ぎ、次の信号を右折。」とか、「一番右側の車線に移ってください。」とか細かい準備を程よいタイミングで教えてくれます。間違いやすいところをわざと「この橋を潜ったら右に分岐。そのまま坂を登っては行けない。」とまるで助手席に乗って指示しているようです。運転下手な私でも初めての道を余裕で走れます。ここまで細かく指示してくれるなら自動運転にしたらどうだと考えてしまいました。

友人の話によると中国の新しい道には既に自動運転のためのセンサーを装着しているそうです。自動運転には車両だけではなく、道路もスマートになってもらわないと無理だそうです。

中国の自慢とまた誤解されるかもしれませんが、中国駐在の日本人に聞けば前から起きている現実だと分かります。今日わざわざ紹介するのはたまたま北京に居る間に宋メールの原稿を催促されたからですが、皆さんのご参考になれば幸いです。

車の自動運転を含むスマート社会はそう遠くないと思うのです。

せめて自分を守ろう

株の経験や知識を持つ人なら誰でも知っている単純なルールがあります。「高値で買うな、借金して買うな。」しかし、今、この2つのルールを同時に破って14兆円以上の株を買った人がいます。日銀の黒田さんです。

5回延期しても2%のインフレ目標に到達しなかった黒田さんはとうとう6回目の延期を発表しました。これはもし企業ならばもう3回目あたりから株主から退陣を要求されていたでしょう。または、こんないい加減な経営をすること自体を恥じ、株主に言われる前に自ら目標修正か辞任かの措置をとることになったはずです。

株価を国家が買い支え、インフレ率も国家が設定し、達成するまで貴重な税金と政策を投入し続ける経済体制は計画経済そのものであり、昔のソ連でもなかなか真似できません。この経済の極端な左寄りになぜ保守勢力が黙っているかが不思議なんです。

安倍政権は保守政権と言われています。確かに政治的には右寄りかもしれませんが、経済はまったくの左翼経済であり、極左と言っても過言ではありません。

我々経営者の多くはどちらかといえば、保守に近い考えを持っています。保守の一番の特徴は社会主義に反対し、市場経済の原理を尊重することです。政府の在り方についてもなるべく小さな政府を好むのです。

国による借金がGDPの2倍である1000兆円を上回りました。未だに国民の純資産や貯金を理由にこの借金を軽視する人が多いのですが、これはお金を持っている親戚から借りたお金を返さなくてもいいという発想です。

しかし、借金は借金です。本当に返さなくなると国家の信用は墜落し、国民が損するだけではなく、日本経済全体が取り返しのつかない信用危機に陥るのです。その結末が平気だと言うならば外国人の私は文句を言えませんが、単にお金を貸してくれた人たちがまだお金を持っていることを理由に借金を返さないと言うならばとんでもないことです。

確かに財政出動で経済の活性化を促し、その結果、財政収入が増えやがて財政悪化を食い止めるシナリオはあります。それならば日本経済の根底にある問題に着眼し、既得権益を打破し、構造改革を断行し、経済成長に投資するならば分かるのですが、日銀が国民から借金して買ったのは成長性のない日本の既得権益者である大手企業の株です。

成長力で言えば日本の大手企業は最も成長力の無い部類に属します。日経225を形成する銘柄をみれば分かるのです。時価総額トップ30社はここ30年の間にあまり変わっていません。東電に東芝にシャープにソニー、どうですか、これ以上に羅列する必要があるでしょうか。

フォーブスの企業ランキングでみると、世界トップ500に入った日本の大手企業は90年代の半分になりました。要は衰退のチャンピオンです。安倍政権の金融政策によって大手企業がキャッシュリッチになっているのになぜ彼らの株を国民からの借金でさらに買い上げなくてはならないのでしょうか。株式市場の基礎知識を持っていないのでしょうか。資金のニーズのないところになぜ無理やり借金してまで資金を突っ込むのでしょうか。

考えらえることはただ一つ、それは単に株を上げたいからです。もし株価(実は日経225の上昇ですが)を上昇させ経済好調を演出し、支持率の上昇につなげる下心があれば、これは国家による株価操作です。個人なら明確な犯罪です。

株価が高止まりの昨年から日銀は株の買い入れ速度を上げて一年で6兆円も投入したのです。借金して高く買う。もうわざと損するようなものです。これは何かの末期現象ではありませんか。

また「反日」宋さんの言いたがりと思うのは自由ですが、同じことを薄々考えている読者がいれば、しばらくは株を持たないことです。せめて自分を守りましょうよ。

トップの体質は組織を決める

劉邦は大の女好きですが、秦の王宮を攻め落とした時、宮内の美女たちに手を付けずにそのまま項羽に明け渡したのです。私欲を我慢したのは劉邦に天下をとるための志があったからです。

それだけではありません。耳に痛い話をよくしてくる蕭何や媚びを売らない戦略家張良、そして変わり者の韓信を重用していました。劉邦が天下を取った最大の理由は自我と感情を我慢し、天下取りに何が必要かを常に冷静に判断したからです。

始皇帝も天下統一のために自分の私欲と感情をよく制御したと言われています。彼は常に一人の官僚に距離をもって自分に随行させ、自分が感情的になった時に「あなたは天下統一の夢を忘れたか」と叫ぶように指示しました。距離がないと始皇帝が感情に任せて彼を切りつける恐れがあるからです。

企業も同じです。志のある社長は決して好き嫌いで人事を決めませんし、友達経営もしません。そんなことをしてしまうと、有能な人材が居なくなり、組織全体の求心力が下がり、志の実現が難しくなるからです。

どんなトップでも自分がトップに相応しくないとは自ら思いません。トップになった以上、トップでいることを当然だと思うのです。そして長くやればやるほど、自分のなすことが正しいと勘違いするようになり、部下たちも媚びを売るようになります。この罠はとても居心地が良くて逃げ出す原動力がなかなか生まれません。

唯一、志のあるトップはそれを看破し、組織力が最大化になるように反対派や個性に気を配り、トップ個人の好みや感情が邪魔にならないようにあの手この手で工夫するのです。

この部下の独立性や内部の反対勢力を包容する力こそがトップの最も重要な素質です。宋メールでも何度か紹介したように、これが中国の「宰相の腹中を船が行く」という諺の由来です。

よく「企業理念」をアピールする経営者がいますが、私は常に懐疑的です。正直綺麗ごとを言うトップに限って自分の私情私欲が強くて自分じゃないと会社が潰れると平気で言うのです。今のトップの反対派であっても、会社を良くしてくれる人がいてこそ、強くて良い会社です。

ここ数年において、私が安倍首相に厳しい意見を持ち続ける理由はまさにこのトップとしての志の問題です。彼がお友達ブレーン(御意見番)のアドバイスを受けて次々に打ち出した理念(アベノミクス、美しい日本、一億総活躍、TPPが成長原動力、人づくり改革)はまさに経営理念を売りものにするダメ経営者の常用手段です。一つの理念の賞味期限が切れるとすぐ別の理念を持ち出して人々の注意を逸らすのです。

好き嫌いな閣僚人事(お友達内閣)、支持者との癒着(籠池、加計)、反対派への感情的言動(「こんな人たち」)など、私にしてみればどれもトップの素質問題であり、志のない証拠です。世界的景気回復に乗って官僚とマスコミをコントロールした結果、人気を得たものの、その本質はいずればれると思っていました。

体質問題をそれぞれのトップに言わせれば彼らも立派な答えを返してきます。皆さんが自分の社長を知るには、ぜひ社長の言葉ではなく、社長の腹の広さ、つまり人事と反対派への処遇を考察してください。

そして人間の体質は変わることがないと理解した方が無難です。